「竜劇隊公演」
2011年3月13日 ホテル海山

色々あった今年の湯野浜での竜劇隊公演もこの日が千秋楽となりました。
この日は千秋楽で天気も良く、地震の影響も薄らいだのもあってか、結構な客入りでした。
第1部のお芝居は『己が罪』…なんですが、2月27日の公演レポートで述べたような事情で
タイトルは『己が罪』のまま、中身は『箱根八里の半次郎』の芝居を行っています。
この演目での岡本さんはいつもお房と言う役を演じていたものの
今回の公演では、当初はお房で出演される予定は無かったそうです。
ただ出演者の事情で演目変更があった事から、今回も岡本さんがお房の役を演じる事になったそうです。

内容はやくざの親分業平の鉄五郎(木内さん)は、己の罪を着てお尋ね者となった
子分吹雪の新太郎の女房お房(岡本さん)を己の嫁にしようと、新太郎が病死したと偽って
お房に迫ろうとする。ところが、企みが成功しかけた所に新太郎が舞い戻り、
新太郎とお房は鉄五郎と絶縁し、旅立ちます。
腹を立てた鉄五郎は旅人の半次郎に
“自分の女房“のお房を新太郎が寝取ったと吹き込み、半次郎に新太郎を斬らせようとする。
新太郎と会った半次郎は新太郎の言い分を聞こうとするが、誤って新太郎を殺してしまう。
半次郎はお房に真相を伝えに行こうとするが、
お房の休む茶屋には半次郎の母がいて…と言うあらすじとなっています。

いきなり役者さん同士の素でのやり取りが始まったり
会場とのやり取りが結構多かったり、飛び道具的な見せ方が多かったですが
かなり会場も盛り上がっていました。
個人的に面白かったのが、新太郎が絶命する件。
瀕死だった新太郎が舞踊の曲がかかると踊り出し、拍手貰うと絶命してしまうのですが
これを見た半次郎が「役者は拍手を貰うまで死ねない」みたいな事を言うのが可笑しかったです。

ただ、後半は半次郎母子の話に時間が割かれていた為、
岡本さんのお房は最後どうなったのか、正直言うとよく分からなかったです。
ただ、お房の良かった場面として、新太郎の仇と言う事で半次郎を斬ろうとするも
ここでおっかさんが盾になって、お房が振り上げた刀の下ろし所に苦しむ場面。
苦悩するお房の心理状態を岡本さんが上手く表現していたと思います。

第2部のショーはまずオープニングが「北海ソーラン」と言う集団舞踊で、
こちらには岡本さんの出演はありませんが、オープニングの次に早くも岡本さんが登場。
今回は歌謡ショーで、歌は「蘇州夜曲」
歌のイントロ部分では千秋楽と言う事もあり、岡本さんのちょっとした挨拶もあり
丁寧な挨拶に、こちらが思わず恐縮してしまいました。
歌については落ち着いた曲調の歌なので、
岡本さんの歌い方もいつも以上にしっとりと落ち着いた歌い方でした。
その澄んで通った上品な岡本さんの歌声を聞くと、何とも言えぬ良い心持ちになりました。

その後、歌や舞踊が続いた後、今回は比較的早めに岡本さんが再び登場します。
演目は「滝の白糸」。石川さゆりさんの歌をモチーフにした演目で
演目は、白糸を中心に共演者が次々に入れ替わる感じで進み
岡本さんの舞踊もありますが、台詞も入ったりすると言う少し長めのショーと言えるでしょう。

岡本さんが演じるのは水芸の芸人・滝の白糸
最初は、裃を付けた芸人の太夫みたいな姿の白糸と恋人の村越欣哉が出て来る所から始まります。
白糸が欣哉を東京に送り出しますと、白糸の前に金貸しの金兵衛にお金を返せと現れ
白糸は金兵衛と揉める内に思わず殺害してしまいます。
直後に舞台の幕が開く事になり、人を殺した事に怯える白糸でしたが、仲間に励まされながら舞台を務め上げます。
白糸は舞台が終ると、やって来た捕吏(警官)に逮捕され、
引っ立てられて行きまして
これで終わりかな?と思っていると、検事に出世した欣哉が登場。
続いて、花道から優雅な太夫の衣装から、白い罪人用の着物に身を包んだガラッと印象の変わった白糸も登場。
白糸を見た欣哉は

「自分が検事になる為に、仕送りしてくれた上、人殺しの罪を背負ってしまった白糸の罪は己の罪」
と殊勝な事を言います。
これを聞いた白糸は欣哉の心遣いを嬉しく感じつつも、

「どうか自分を立派に裁いてほしい。たとえ死刑になったとしても自分は泣かない!」
と言い放ち、気丈に振舞います。
ラストは白糸が死刑になる事が暗示され、ショーは終演となります。
話としては、悲劇に分類される話ではありますが、強さと脆さが同居した白糸の魅力を
岡本さんが台詞・舞踊・表情と言った様々な部分で表現していて、非常に引き込まれました。

あと、滝の白糸と言えば、水芸が一番の見せ場になります。
舞台規模から、流石に本物を使うと言う訳にはいきませんので、
岡本さんが二本の扇子(これをサッと同時に広げる場面が非常に格好良かったです)を使って
さも水が出たり止まったり、飛び出すように見せていますが、
不思議なもので岡本さんの技量もあって、何となく水芸しているようなイメージが出来上がってくるような気がしました。

その後舞踊等が続いて、今回はラストショーにも岡本さんが登場します。
演目は「ファンクフジヤマ」。岡本さんと竜劇隊のお三方が、二本の金の扇子を使い舞踊を披露すると言う内容で
面白かったのが、扇子を操る岡本さんに隊長の木内さんが膝枕をしようとすると
舞踊の動きの流れで、岡本さんが木内さんを扇子でピシャリと叩く場面
岡本さんが自然に表情一つ変えず叩くので、何とも可笑しい場面でした。

なお、3月1・3・7・9・11日も同じ内容で公演が行われたようです。

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