「竜劇隊公演」
2011年2月27日 ホテル海山

この日の第1部のお芝居は『箱根八里の半次郎』と言う演目
…なんですが、事情でタイトルは『〜半次郎』なのですが、中身は『己が罪』の芝居をやっていたとの事です。
岡本さんが演じたのは、陣内家の大奥様(役名は設定上無い)
簡単に粗筋をまとめますと、武家三浦家の後継ぎ和義は奥方良恵の言いなりで
木内さん演じる和義の実の父(役名は設定上無い)を奉公人同然に虐げた挙句、役宅から追い出そうとする。
和義の弟・半次郎はそんな父を庇い、和義も父を家に戻そうとするが、妻女良恵の心変わりで
父は追い出され、父を庇った半次郎も兄和義から勘当されるが…と言うあらすじ。

湯野浜での公演は、いつもは盛り上がる所をわきまえたファンが多く
比較的落ち着いた雰囲気で芝居を見られるように感じていたのですが、
この演目を見に行った日は、悪乗りしてたのか、妙に芝居に入り込んでいるのか
定かではありませんが、とにかく異様に盛り上がったお客様が結構いらしたのです。
さらに、和義と良恵が木内さんの父をイビるシーンが長いと言う演目の性質もあってか
和義や良恵の行動にヤジが飛んだり、芝居が客席に良くも悪くも引っ張られ、異様な盛り上がりを見せていました。
演じられた竜劇隊の皆様もかなり大変だった事と思われます。

岡本さんの陣内家の奥方はどこで出てくるのかと言うと、半次郎達が和義に追い出された直後に岡本さんが登場してきます。
登場してきた岡本さんのお姿は、衣装も立居振舞いもかなり上品そうな武家の奥方と言った感じ
その上、「この件、わらわに任せてもらえぬか」なんて言い出すと言う、
上品な役を演じる岡本さんは結構見た事ありますが、こう言うタイプは今まであまり見た事が無いタイプでちょっと驚きました。
まして、前日の公演で岡本さんの『質屋の娘』のお福(頭のちょっと足りない役)を見ていた事もあって、凄くギャップを感じました。
で、岡本さんが「任せてほしい」って言ってすぐに場面転換。何が起こるのか?と思ったら
岡本さんの奥方の差し金で、半次郎を陣内家の娘・早苗の婿に、と言う芝居を打たれます。
実は陣内家は、三浦家の主筋に当たる為、和義と良恵は半次郎を当主と仰がなければならず
結局、和義と良恵は半次郎と父親に自分達の行いをそっくりそのままやり返された事で
和義も良恵も己の非を認め、改心する(ちょっと安直?)と言うラストに至ります。

今回の岡本さんは、正直言うと全体的な台詞量はそんなに多くなく、
最後の場面で、じっと座って半次郎と和義達のやり取りを見ている後見的な印象が強かったです。
ただやり取りを見ている場面で、時折視線を動かす事はあっても、
基本的に目を一点に据えてじっとしているだけでも、かなりの存在感があったように思います。
実際、役の重要度(岡本さんが話の鍵になっている)は高く、話の抑え的な人物となっていますし
何より、劇中の揉め事を解決したり、和義の「己が罪」を正すのも岡本さんの台詞なのですからね。

また、「わらわ」、「そなた」と使ったり、他の演目ではあまり見られない上品で高級そうな格好をしているので
堅い武家の奥方なんだろうな、と思っていた所
ラスト、芝居で一緒になった半次郎と早苗が本当に結ばれる事になると
「これが本当の嘘から出たまこと」と扇を出して最後の最後で決めポーズを作るシーンがあったのには
アレ?と思う一方、密かに「岡本さん、待ってました!」と思ったものです。
あと、岡本さんが和義を「みうらかずよし」と何度も呼ぶ際には、名前が名前なので呼ぶたびに笑いが起きておりました。

ちなみに『己が罪』と言う芝居について、詳しく伺った所
この芝居は元々かなり昔の芝居で、元の作品は三浦和義(元のお芝居では役名が違う)の上役の陣内と言う人物はいるものの、
陣内の奥方と言うのは全く存在しないとの事で
元の芝居の陣内の役所をこの芝居ではその奥方と言う事にして、岡本さんが登場できるように脚本を手直したのだそうです。
おそらく、この芝居で岡本さんの役名が設定されていないのは脚本の手直しの際に、役名が設定されなかったからだと思われます。
また、木内さんの父上も芝居の中では役名が出てこず、設定上は役名無しだったそうですし
元の芝居では和義の奥方が最後に殺される辺りの設定も、現代に合うように変えたのだそうです。

2部のショー、今回は岡本さんと木内さん達5人の舞踊「ひばりの三度笠」
「三度笠」とタイトルには入っていますが、岡本さんは女物の黄色と黒の着物で登場
この演目は、最初からしばらくは木内さん達が踊っている所に岡本さんが合流すると言う流れになっていました。

その後舞踊や歌が続き、そろそろ岡本さんの舞踊か歌かな?と思った所で、岡本さんのショー「唐人お吉」と相成ります。
ショーと言っても、唐人お吉に扮した岡本さんの踊りが入りつつ、
実際のお吉もそんなかんじだったそうですが「売女」などと言われ、石を投げられる小芝居みたいなのが合間に入る感じでした。
酒に溺れるお吉を表現するシーン、岡本さんの儚げな表情がいつもにも増して魅力的な感じがしました。
また、酔って足元がおぼつか無い感じを表現する岡本さんの足運びも見事でした。

その後、舞踊等が続いた後、ラスト前の岡本さんの個人舞踊「ひとり旅」へと移ります。
この演目は、浴衣姿(前見た時と浴衣が微妙に変わっていました)の岡本さんが
団扇、蛇の目傘、手ぬぐいを使い、途中曲が「リンゴ追分」に一旦変わる演目です。
今回は客席が割とノリが良かった関係か、途中からは曲に合わせ手拍子も入り
岡本さんも決める場面では「ハッ!」と掛け声をかけたり、終始明るい感じで舞踊を披露しており
いつも以上に盛り上がった雰囲気となっていたように感じました。

あと、岡本さんは舞踊が終わるよく「どうもありがとうございました!」と挨拶するのですが
その挨拶の声にもいつも以上に嬉しさが籠っていたような気がしました。
ラストの「雪の渡り鳥」(鯉名の銀平)には岡本さんは出演されていません。

なお、2月21・25日も同じ内容で公演が行われたようです。

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