「竜劇隊大井沢公演」
2015年2月21日 山形県西川町

初公演から五年目を迎え、毎年恒例となった感もある西川町大井沢の「自然と匠の伝承館」で行われた竜劇隊公演
豪雪地帯らしく、辺り一面雪の壁となっている恐ろしいまでの雪が道を取り囲んでいたものの
当日は2月とは思えぬ非常にさわやかな天気だったので、私も山道をはるばる越えて見に来ました。
会場は地元の方のみならず、色々な方が集まり、超満員と言って良い位のお客様で溢れていました。
公演は朝の9時半という比較的早い開始で、竜劇隊の前に大井沢の皆さんによるお芝居が行われ
会場が盛り上がった所で、いよいよ竜劇隊の公演がスタート。

今回のお芝居は『流転三度笠』と言う演目
この演目は、以前湯野浜での公演でも行われた演目で
湯野浜では日程の都合でどうしても見る事が出来なかった演目だったものの
茉利さんがメインの演目である事から、以前からずっと見てみたかった演目で
公演が始まる頃には期待は最高潮となっておりました。

(あらすじ)岡本さんが演じる”会津のお仙”は、網元善兵衛殺しの罪で捕まったのですが
己の無実を晴らせないなら、最後にせめて年老いた母達に一目会いたいと思い、牢破りをしたのでした。
お仙は江戸から追って来た目明し”黒門町の佐吉”に一旦は召し取られますが
佐吉はお仙の心根を信じ、三日間の猶予を与えて母達に会いに行く事を認めます。
土地の目明し”松島の権次”(木内座長)は、お仙が戻るはずが無い!と佐吉を責め立て、
佐吉は三日の内にお仙が戻らなければ腹を切る事になってしまいます。
実は、お仙は意外な人物の罠にはめられ、濡れ衣を着せられていたのですが…

岡本さん演じるお仙さんが罠にはめられ、無実の罪で追われると言う筋立てだけ見ると、
普通の時代劇っぽい話で、話そのものも正統派の時代劇っぽく最後まで進むのですが
合間合間に、竜劇隊の公演ではおなじみのコミカルな要素が交えられるので
笑いを交えて、舞台は進行して行きます。

ラストは、無論お仙さんは肉親と再び暮らせるようになると言うハッピーエンドで幕を閉じますが
このお芝居でとにかく笑える見せ場はラストに至る件だったのです。以下で詳しく紹介してゆきます。

(終盤のあらすじ)お仙さんは、佐吉親分に恩を受けた渡世人”素走りの鶴次郎”の助けを受け
猶予ギリギリで佐吉親分の元へ戻り、佐吉親分の切腹は避けられます。
さらに、お仙さんは自分に殺しの濡れ衣を着せた真犯人が松島の権次であると佐吉親分に言いますが
(ちなみに、直前のシーンで権次はお仙さんに自分がお仙さんに袖にされたから殺したと白状しています)
権次(と言うか木内座長)は
会場アンケートを取って、お客様に「自分がそんな恐ろしい事をする人間じゃないですよね?」
と問いかけますが、客席からは案の定、否定されてしまうのが面白い所でした。
(どうしても否定するのが、自然な流れになっているので、私もつい声を揃えて言ってしまいました)

その後、さらに面白いのが開き直った権次達とお仙さん達の大立ち回りシーン。
お仙さんと権次の一騎打ちとなり
権次が「てめえみてえな野郎にひけを取る大井沢の権次じゃねえ!」と凄むのですが
ここで、お仙さん(と言うか岡本さん?)は急に素に戻ったかのような口調で「今何て言った?」と切り替えします。
てっきり女のお仙さんが「野郎」って言われた事に反応したのかと私は思ったのですが
お仙さんが指摘したかったのは「今まで”松島の権次”と名乗っていたのに急に”大井沢の権次”と名乗りを変えた」点だったのです。
「松島の権次のまま終わると、悪人のままで終わってしまうけど
大井沢の権次と名乗れば、(お客様の)身内の人間だから、許してもらえる」
みたいな言い訳を始める権次に対し
お仙さんも「客席に媚びて」許しを請おうとしている権次に対し
「大井沢にこんな悪い人がいるはずありませんよね?」と客席に同意を求め
さらに権次に「ここで”大井沢の権次”なら次の公演先で何て名乗るの?」

と絶妙の返しを見せて、権次もとうとう年貢を納める事になるのでした。
このシーンは特に、お仙さんと権次と言うより、岡本さんと木内座長の素の混じったやり取りが見所でした。

お仙さんのキャラについては、
事件の真相を知った時に、悲痛そうな表情を見せるような儚げな面があったり
牢破りしてまで肉親に会おうとする強さを持っていたり、色々な面を見せるキャラですが
基本的には、強さ優しさを兼ね備えた岡本さんらしさが強く感じられる女性
として描かれていたと思います。
権次や子分達と真っ向から立ち回りを見せるシーンのような、見ていて心躍るような格好良いシーンもありまして
岡本さんが(竜劇隊公演で)メインの役所を演じるお芝居で、
このような”格好良い!”と思えるタイプのメインキャラを演じているのを見たのは初めてですが
やはりこう言うタイプの岡本さんを見ますと、爽快感があって堪えられませんね。

前述の通り、”岡本さんがメインの役所の演目”と伺っていた為
事前の期待以上に、笑えて楽しめた演目でした。

ちなみに、入場時に受け取ったパンフレットを見てみますと、
”主演 沢竜二”と大きく書かれていまして
『流転三度笠』と言うお芝居は、元々男の人を主人公にしたお芝居だとも伺っていたので 
この公演では主人公は沢さんが演じて茉利さんは別の役を演じるのかな?とか
沢さんが何かしらの役で出てくるのかな?と思って見ていたのですが
お芝居には沢さんは出演されず、第2部のショーのみの出演でした。
なお岡本さんは公演終了後、お仕事の関係等で一旦東京に戻られた後
2月23日から、由良温泉八乙女の公演に復帰されたそうです。

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