「竜劇隊公演」
2015年2月23日 由良温泉八乙女

今回の山形での竜劇隊公演は、昨年までの鶴岡市の湯野浜温泉「ホテル海山」に代わって
同じ鶴岡市にある由良温泉「八乙女」での公演となりました。
基本的には公演時間等はホテル海山と同じで
(午後1時開演でショーを含めて正味の公演時間は2時間程度)
岡本さんは今回、お仕事の都合で日曜日の出演が無かった為、平日であるこの日に見に伺いました。
なお、2月21日分のレポートでも紹介したように、
21日にお仕事の都合等で東京に戻られた岡本さんは、公演当日に戻られてこの公演に臨まれたそうです。

第1部のお芝居は『流転三度笠』(当日は別の題『三日の娑婆』とアナウンスされていました)と言う演目
この演目は、21日にも大井沢で拝見した演目でしたが
岡本さんがメインだったし、事前の期待以上に良い演目だった事から
今回も大いに期待して開演を待ちました。

(あらすじ)岡本さんが演じる”会津のお仙”は、網元善兵衛殺しの罪で捕まったのですが
己の無実を晴らせないなら、最後にせめて年老いた母達に一目会いたいと思い、牢破りをしたのでした。
お仙は江戸から追って来た目明し”黒門町の佐吉”に一旦は召し取られますが
佐吉はお仙の心根を信じ、三日間の猶予を与えて母達に会いに行く事を認めます。
土地の目明し”松島の権次”(木内座長)は、お仙が戻るはずが無い!と佐吉を責め立て、
佐吉は三日の内にお仙が戻らなければ腹を切る事になってしまいます。
実は、お仙は意外な人物の罠にはめられ、濡れ衣を着せられていたのですが…

岡本さん演じるお仙さんが罠にはめられ、無実の罪で追われると言う筋立てだけ見ると、
普通の時代劇っぽい話で、話そのものも正統派の時代劇っぽく最後まで進むのですが
合間合間に、竜劇隊の公演ではおなじみのコミカルな要素が交えられるので
笑いを交えて、舞台は進行して行きます。

ラストは、無論お仙さんは肉親と再び暮らせるようになると言うハッピーエンドで幕を閉じますが
このお芝居でとにかく笑える見せ場はラストに至る件でして
前回の大井沢以上に笑ってしまったので、以下で詳しく紹介してゆきます。

(終盤のあらすじ)お仙さんは、佐吉親分に恩を受けた渡世人”素走りの鶴次郎”の助けを受け
猶予ギリギリで佐吉親分の元へ戻り、佐吉親分の切腹は避けられます。
さらに、お仙さんは自分に殺しの濡れ衣を着せた真犯人が松島の権次であると佐吉親分に言いますが
(ちなみに、直前のシーンで権次はお仙さんに自分がお仙さんに袖にされたから殺したと白状しています)
権次(と言うか木内座長)は会場アンケートを取って、
お客様に「自分がそんな恐ろしい事をする人間じゃないですよね?」

と問いかけますが、客席からは案の定、否定されてしまうのが面白い所でした。

その後さらに面白かったのが、開き直った権次達とお仙さん達の大立ち回りシーン。
お仙さんと権次の一騎打ちとなり、大井沢では権次がお仙さんに対し
”大井沢の権次”と名乗った注目のシーンとなります。
案の定、権次は「てめえみてえな野郎にひけを取る由良の権次じゃねえ!」
と地名を変えて凄んできますから、分かっていた事とは言え、私は大笑いします。
「松島の権次のまま終わると、悪人のままで終わってしまうけど
由良の権次と名乗れば、(お客様の)身内の人間だから、許してもらえる」
と大井沢の時と全く同じ言い訳を始める権次に対し、
お仙さん(と言うか岡本さん?)は急に素に戻ったかのような口調で「何で急に変わるの?」と突っ込みを入れたり
権次の言い訳に「うん」「うん」と呆れたように相槌を打ったり
さらに「由良に、まして庄内地方にこんな悪い人がいるはずありませんよね?」と客席に同意を求めます。
極め付きがこのお仙さんの問いかけの後で、客席の方から(私含む)同意する声が上がった後の場面
権次が客席に突っ込みを入れ、お仙さんが「そんな事言ったら困るでしょ?お客さんに」と権次を嗜めるわ
権次が言おうとした台詞をお客さんに言われてしまい
権次に「遅いんだもん」と突っ込んだ上、「何て言うの!?」と台詞を強引に促したり
岡本さんと木内座長の素の混じったやり取り(と客席の盛り上がりっぷり)が非常に面白かったです。

お仙さんのキャラについては、
事件の真相を知った時に、悲痛そうな表情を見せるような儚げな面があったり
牢破りしてまで肉親に会おうとする強さを持っていたり、色々な面を見せるキャラですが
基本的には、強さ優しさを兼ね備えた岡本さんらしさが強く感じられる女性として描かれていたと思います。
権次や子分達と真っ向から立ち回りを見せるシーンのような、見ていて心躍るような格好良いシーンもありまして
やはりこう言うタイプの岡本さんを見ますと、爽快感があって堪えられませんね。
大井沢でも期待以上に面白かったので、由良でもその面白さを発揮してくれると期待していましたが
今回も事前の期待以上に、笑えて楽しめた演目でした。

余談ですが、話の筋立てを改めて考えてみれば、権次は(お仙にちょっかいをかけると言う)余計な画策をしなければ
ぼろが出なかった(お仙は佐吉親分に捕まれば、そのまま死罪になる筈なので)のではないかと思ったのですが、
悪事を犯した人間は余計な画策をして泥沼にはまってしまう、
悪事は露見すると言う事をこのお芝居では、言いたかったのだと個人的には思っています。
あと、今回のお芝居、キャラクター以外で
岡本さんの声の力を特に感じたのがお仙さんが「ダンナ〜!」と叫ぶシーンで、
いつも以上に岡本さんの声の伸びがあって良かったです。

木内座長の挨拶、休憩を挟んで第2部のショーとなります。
今回は出演者が多かった事もあって、唯一の岡本さんの出番はラスト前でした。
演目は舞踊『ひとり旅』で
大銀杏を結った浴衣姿の岡本さんが、傘と団扇を使った舞踊を披露する
と言う岡本さんの十八番の演目の一つ
です。
動きの切れの良さ、途中で挙がる岡本さんの「ハッ!」と言う掛け声の格好良さ等、
岡本さんの魅力が強く感じられる何度見ても良い演目です。
ちなみに、今回は公演場所にあるメインの舞台が大きくない事から
岡本さんはショーの前にセッティングされたサブ舞台を中心に舞踊を披露されていました。

参考資料・由良温泉八乙女における芝居・ショーでの岡本さんの演目
(OP→ショーのオープニング、ED→ショーのフィナーレ)
公演日第1部・芝居の演目と役所舞踊演目・OP&EDショー演目
2月15・22日「待っていた男」(岡本さんは出演されていません)
2月16・20・25日「知らぬが花」・長兵衛の女房お新
(「雨に咲く花」)
「唐人お吉」「お前に惚れた」の日もあり)「祝い船」
2月17・23・26日「流転三度笠」・会津のお仙
(「三日の娑婆」)
「ひとり旅」「マツケンサンバ」(千秋楽のみ)
2月19・24日「旅烏 母を訪ねて」・吉松の母お由 「次男坊鴉」

公演レポートへ戻る