岡本茉利さん対談記事再録


こちらでは雑誌記事紹介と言う事で、往年のアニメ雑誌『ジ・アニメ』誌で連載されていた対談コーナーに
岡本さんがゲストとして登場された笹川ひろし&飯島敬フリートーク第9回(1982年2月号収録)の模様をまとめてみました。
ホストは笹川ひろし氏と飯島敬氏で、笹川氏はアニメ監督として数々の名作に携わっており、ご存知の方も多いと思います。
飯島氏はアニメ作品のプロデューサーとして主に東映の様々なアニメ作品製作に携われた方で、笹川氏とかなり縁が深かったようです。
縁の深い笹川氏がホストと言う事もあって、生真面目な印象は残しつつ、時には大胆な部分に踏み込んだり
当時20代後半の岡本さんの本音が知る事が出来る貴重な場でもあります。
なお、文中青字の部分が飯島氏の発言
緑色の部分が笹川氏の発言
赤字の部分が岡本さんの発言となります。



  1. 声優デビューのきっかけ
    岡本さんが芸能の道を志すようになったのは
    子供の時、ご自身の家の前で撮影をしていた映画(注『喜劇 団地親分』の事)を見ていて、ちょっと使ってもらった事がきっかけ
    映画出演後、大阪のNHKの児童劇団に入りますが、数年後東京に引っ越し
    『みなしごハッチ』のオーディションを受けたのが声優になったきっかけだったそうです。

    岡本さんの声優としてのデビュー作は前述の『みなしごハッチ』(の第二話)で、
    初レギュラーは笹川ひろし氏が監督を務められた「いなかっぺ大将」でした。
    以降も「てんとう虫の歌」、「ヤッターマン」等タツノコでは笹川氏の作品に岡本さんは多く出演されますが
    笹川氏がオーディションで岡本さんを見た際に感じた印象はとにかく声がキレイで真面目と言うものだったそうです。
    (この点、飯島氏も同調されていました。)
    それと、当時の岡本さんはお母さんがつきっきりで、心配そうに見ていたのが印象に残っているのと、
    役者さんらしくない人だな、と感じていたそうです。

    岡本さんはデビュー作の『いなかっぺ大将』では
    (ニャンコ先生役の)愛川欽也さんの台本を見てなくてもそれらしい台詞がポンポン出てくる事が
    面白かったのと同時に天才的だと感じていた
    そうです。
    また、デビューした頃は高校生だったからか、あまり苦に思った事はあまり無く、
    みなさんに可愛がられて「茉利ちゃんを守る会」まで作っていただいた
    のだとか。

    なお、岡本さんの出身地について、ご本人がおっしゃるには
    母のお腹から出てきたのが東京なので、出身は東京ですが育ちは大阪との事です。
    また、元々岡本さんは演劇好きで、小さい頃から音楽に合わせて体を動かすのが好きなので
    日本舞踊(日舞)、西洋舞踊(洋舞)、殺陣は好きとの事
    また笹川氏は、岡本さんの洋画吹き替えの中では 『オズの魔法使い』のジュディ・ガーランドが非常に印象に残っているそうですが
    「あの(『オズの魔法使い』を演じた)頃の方が太っていたんじゃないですか?」と聞かれた岡本さんの
    「体重は変わらないんですが、肉のつき方が変わってきただけじゃないですか(笑)」
    と言う返答も印象的でした。

  2. アニメ声優と女優の両立
    『いなかっぺ大将』と同時期に『男はつらいよ』に出たのが、岡本さんの本格的な映画出演のきっかけとなります。
    ただ、笹川氏によれば映画はロケが多い事もあって
    30分の(アニメ等の)声の仕事のために山形辺りから帰ってきてもらった事もあったり
    映画の仕事が入って(アニメの仕事で岡本さんに)振られた事などもあったりで
    実写とアニメのスケジュール調整で苦労した事が結構あった
    そうです。

    ただ、岡本さんはそうした難しいスケジュールに関しても
    人間は飽きる事があるので、スタジオでアニメをやると、(心の)リフレッシュになる為、特に苦にはならないと考えていたようです。
    また、岡本さんは声優と役者の区別は無いと思っていたそうです。

  3. 色々な声について
    岡本さんがちょうど映画のロケから帰ってきたばかりの時に
    「ヤッターマン」でおばあさんの声を演じる事(101話50年後のヤッターマン)
    がありました。
    岡本さんはこの時、お婆さんだからガラガラ声でやろうと思っていたそうですが
    笹川氏からはハスキーな声でお婆さんをやってほしいと指示され
    その発想に驚かされたそうです。
    なお、お婆さん役について岡本さんはいつも女の子、女の子できたので、たまにおばあさんにチャレンジするのは面白かった
    と思っていたそうです。

    また、男の子の声に関してはとっても小さな男の子の声ならば、やった事もあるそうですが
    岡本さんご自身の持ってる声帯が、元々そうなっているからか、
    男の子の声も女の子のような声になっていた
    のだそうです。

    ちなみに対談の中で、岡本さんは50年後のアイちゃんの絵に関して笹川氏に
    「私を想像しながら、あのお婆さんを描いたんじゃないですか(笑)」と言っておりました。

  4. 殻を破ると言う事
    笹川氏は熱海で行われた岡本さん出演の『人生劇場』を見に行った時
    クライマックスで水槽の中で芝居をする岡本さんの姿に
    今までお嬢さんタイプだったのに、どこかで吹っ切れたんだな
    と感じたそうです。
    以前の岡本さんは仲間同士でエッチな話をしていても露骨に嫌な顔をしていたそうですが
    役者と言うのは恥かき商売って言われる位で、恥ずかしがっていても仕方ない
    ある程度、自分を破っていかないとダメ
    と岡本さんご自身が考えるようになったそうです。
    そうした発想の転換から、色々な作品等へも挑戦できるようになったそうです。

  5. 一生懸命
    飯島氏は岡本さんの一生懸命な所に魅力を感じたそうですが
    岡本さんは一生懸命と言う事に関して
    私から一生懸命を取っちゃったら何も残らない。とにかく芝居が下手なら一生懸命しかないと思う
    ただ私の場合、力も無いのに100%を出して後で息切れしたりと、一生懸命が過ぎてこけちゃう所があるのが欠点

    と考えていらしたようです。

  6. 笹川氏が感じた岡本さんへの不満
    笹川氏曰く、茉利さんの芸者姿は顔も良いし、かつらも合ってきたと思う。
    ただ、色気がちょっと…
    と感じていたそうです。

    この指摘への岡本さんの返答は女性の色気はとっても難しい。特に芸者さんの色気は中々出せないんですと言う物で
    やはり難しさを感じていらしたようです。

  7. キャラへの付き合い方
    岡本さんはアニメにおいては「キャラクターに恋してしまう(キャラクターの絵に惚れてしまう)」一方
    アニメの中の状況、シチュエーションは経ってしまうと消えますが、役だけは、そのまま引きずって行く感じになっているそうです。
    また、アニメの役で成功不成功を分ける物とは?との問いにも
    自分のやるキャラクターに惚れこまなきゃ駄目なんですね。
    役に惚れないでやってても力が入らないんですよ
    と、
    役に惚れ込む事の大事さを強調されていました。

  8. 面白かった作品と苦労した作品
    岡本さんは今まで演じたアニメの中で面白かった作品として『いなかっぺ大将』
    苦労された作品として『てんとう虫の歌』を挙げていました。

  9. やってほしい役所・やってみたい役所
    笹川氏は岡本さんにやって欲しい役所としてメアリーポピンズの魔法使いのようなミュージカルを挙げていました。
    一方、岡本さんは冷たい女の人、三枚目、汚れ役をやってみたいと思っていたようです。

  10. 大阪での出来事
    飯島氏は大阪で行われたイベント『声優フェスティバル』(対談の少し前に行われた)に岡本さんが参加された際
    他の人は割と遊び気分というか、楽しみ気分でやってる中、
    岡本さんが一人だけ一生懸命に演っていたのを見た事があった
    そうです。
    真面目な岡本さんの人柄が伝わってくるエピソードだと言えるでしょう。
    飯島氏はこのエピソードが非常に印象に残っていたらしく、
    後にある仕事で岡本さんをヒロイン役に指名して交渉したものの
    振られてしまったそうです。

    岡本さんご自身は「私、仕事を断るほど偉くないですから(笑)」とおっしゃっていますが…


その他の岡本さんの印象的な発言

(辛い事もあったのでは?と言う質問に)
「今になって考えてみると、辛い事ってパッと思い浮かばないですね。辛いことは忘れちゃうんです」

(キャラクターと声優の骨格を合わせる話に関連して)
「私は顔が丸いのに役はいつも細いタイプの人とか、有難い事に美人の役なんですね。
ファンの人が見たら、さぞビックリするんじゃないですか。あまりにイメージが違いますからね(笑)」

「茉利さんは大きくなった」とあちこちで聞くんですよとの笹川氏の言葉に)
「エッ、それは太ったという意味じゃないですか(笑)」
(直後、「太った時は大きくなったじゃなくて、ふくれたって言うんですよ(笑)」との笹川氏の突っ込みが入ります)

(飯島氏が新幹線車内で仕事の事を岡本さんに話そうとした際
岡本さんの母君のガードが固く声をかけ損ねたとの飯島氏の発言に)
「あの時は私が母親をガードしてたんですよ」

(恋の話・その1)
「恋はしょっちゅうしてるんですよ。してる事はしてるんですけど、いつも振られてばかりなんですよ。
皆さん妻子持ちで(笑)」

(恋の話・その2)
「私は恋をすると、どうしても一途に思い詰めちゃう方だから、ついつい自分で軌道修正してしまうんですね」

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