「沢竜二特別公演」
2012年2月25日 ホテル海山

この日の第1部のお芝居は
『王将』と言う有名な将棋の棋士・阪田三吉を題材にした演目

演目自体、以前(2010年)の全国座長大会の時に演じた沢竜二さんの看板演目の一つ(※1)と言う事で
いつも以上にセットや演出にも力が入っていました。
阪田三吉についての人となり、小春と言う女房がいる…と私自身も基礎的な事は知っていたのですが
三吉・小春の夫婦愛をテーマにした映像作品、舞台作品は初見なので、新鮮な気分で芝居を拝見できました。
大阪の下町の長屋に暮らす草履職人三吉(沢竜二さん)は本業より将棋が好きで
いつも女房の小春(岡本さん)を泣かせていたのですが
三吉は大阪から将棋名人を!と言う悲願を持つスポンサー宮田に見込まれ、最初は拒んでいた小春もこれを受け入れ
三吉は本職の将棋指しになります。
その後、三吉は東京に出て時の東京将棋界の第一人者関根名人と対局する事になるのですが
その直前に悲劇が…と言うのがあらすじとなります。

舞台の幕が開くと、岡本さん演じる小春が大阪の長屋の衆に三吉(三やん)の事を愚痴るシーンからスタートします。
最初の印象から岡本さんの小春は、気が強いけど(多分)夫を大事にする優しい女性と言う感じかな?と想像し
こう言うタイプの女性で出番が多ければ、文句は無いのに…と思って見ていました。
実際見て行くと、三吉に「将棋とウチとどっちを取る?」
と強く迫ったりする小春の気の強い女性的な描写は若い頃だけで
後半は(歳と共に落ち着いたと言う事か)内助の功で尽くすタイプの女性と言う
岡本さんらしさが光る小春になっています。
キャラクターとしては、想像とちょっと違ったタイプではありますが
個人的には小春のキャラは非常に好きでした。

そんな小春ですが、三吉が東京に着くと重い病にかかり、
遂に三吉と小春の別離のやり取りとなるのですが、舞台は東京と言う事で
どうやって大阪にいる設定の小春(岡本さん)が出て来るのか?と思ったら
舞台袖から、衝立で隠された岡本さん達が登場して来ると言う手を使うのには驚きましたが
ここは本当に良いシーンでした。

小春の陰からの支えが三吉にとって、力になっていただけに
小春が死んで、三吉が悲嘆に暮れるシーンで幕が下りて、終わり…?と思ってしまった位です。
ところが、小春が死んだ筈なのにバックに「夫婦一生」(歌・北島三郎さん)が流れる中、突然、岡本さんが登場
しかも、先ほどの死に際の衣装とは違った黄緑色の着物を見に纏いながら、舞踊を披露すると言う
見ていた立場から言うと、あれ?と思う展開を見せます。
しかし、岡本さんの舞踊を見てると、やはり優雅で綺麗だなあと思い、
流れの中での意味についてはともかく、見入ってしまいました。
ちなみにこの舞踊、途中からは岡本さんには珍しくおかめのお面を付けながらの踊る部分もあります。
舞踊が終わった後は、三吉が再び登場してきて、今度こそお芝居は終わりとなるのでした。

今回の演目、割と笑いが入る部分もちょくちょくとありますが
真面目な芝居なので、いつも以上に力を入れて拝見しました。
また周りの登場人物、話も文句無しの出来でした。
強く感じたのが、沢竜二さんの存在感でして
いつも全力投球で役に挑む岡本さんも、沢さんの気迫に乗せられて
普段の本気以上の力を発揮していたように感じました。
そうした気迫がこちらにまで、伝わって来たからか?
特に沢さん、岡本さん共に演技に力が入っていた小春の臨終シーンでは、
こちらも思わず眼が潤んでしまった位です。
(最近、時代劇見ても時々泣くようになりました。歳のせいかな?)

休憩等を挟んでスタートした第2部「沢竜二 夢の花道」ショーのコーナー
オープニングの「鳶(とび)」に岡本さんは出演されず、オープニングに出ないなら早めに出るだろう…
と身構えていたのですが中々出てきません。
ようやく、岡本さんが登場してきたのは大分後半になってから
今回の演目は「次男坊鴉」(歌・沢竜二さん)で、
この舞踊の際の岡本さんの表情をよく見ていると、岡本さんが表情豊かに(コミカルな感じも結構あり)踊っている事が分かりました。
男装姿で脇差を差してる岡本さんの姿は、かなり凛々しく感じられました。

その後、ラストショー「母恋仁義」にも岡本さんは出演されず、
今回のショーでの岡本さんの出演は舞踊「次男坊鴉」のみでした。

※1→ちなみに、全国座長大会の時は小春役を淡路恵子さんが演じ、岡本さんは三吉の娘お玉(玉枝)を演じました。

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