「竜劇隊公演」
2014年2月25日 ホテル海山

この2014年の湯野浜公演は土曜日曜は沢竜二特別公演がセットされ、通常の竜劇隊公演は平日のみでした。
平日ではありましたが、お芝居がどうしても見に行きたい演目だったので都合を付けて見に訪れたのがこの日。
第1部のお芝居は『女三界に家なし』と言う演目ですが
このお芝居は理由は後ほど述べますが、初めて見た時に色々な衝撃的なシーンがあったり
岡本さん演じるお花のキャラクターが良いのもあってか
竜劇隊の数ある演目の中でも、一・二を争う位好きな作品です。

岡本さんが演じたのは漁師清二の妹で、見初められて呉服問屋升田屋の嫁になる娘・お花
まず、舞台の幕が開くと間もなく、花道の方から「あんちゃん、大変だ〜!」と大きな声を上げながら
早速岡本さん演じるお花が登場してきますが
田舎訛りが強い上、甲高くまくしたてるようなコミカルな雰囲気のお花を演じている人が
あのヤッターマンのアイちゃん、花の子ルンルン等々を演じられた
岡本茉利さんと結びつくのは中々容易ではない位、ギャップが強いかと思います。
(この演目と並ぶ、岡本さんの舞台での十八番『質屋の娘』のお福
はもっとギャップが凄いですが)

そして、このお芝居の中で岡本さん絡みのシーンで、特に強烈なインパクトを残す場面があります。
それは清二が沈没した観光船を助けに向かった後、清二に一緒に行くのを止められたお花が、救助に向かおうとする場面です。
ここでお花は、清二の発した格好良い決め台詞をコミカルに真似しながら、救助に向かおうとするのですが、
決め台詞を言った後にかかる「ハッ!」と言うかけ声が中々かかりません。
たまらずお花は芝居を中断し、「『ハッ!』と言う声がかからない事」を音響の人に訴えますが
音響の人の返事は「テープが切れたので、自前でやって下さい」と言う物でした。

困ったお花、ふと客席のお客様に目をやると
何とお客様に「声を揃えて『ハッ!』と言ってもらえますか?」と提案し始めます。
そして、お花(と言うか岡本さん)から段取りの説明があり、その指示に従い客席総出で「ハッ!」と言う掛け声を出す事になるのですが
この場面の岡本さんの喋りは、コミカルなお花と言う役と普段の真面目な岡本さんの人柄が入り混じったように感じました。
テンションが非常に高めで、ユーモアに富んだ喋りが面白かった一方、客席を上手く乗せる岡本さんの仕切りの上手さも非常に印象に残りました。
まず、リハーサルを一回してから本番と言う流れなんですが
リハーサルをした後の、本番一回目の「ハッ!」はちょっと合わない感じだったので
岡本さんは所々で笑いを取りながら、客席に再度「ハッ!」の掛け声を促してゆきます。
二度目の「ハッ!」は上手く決まった感じで
お花(岡本さん)もノリノリの掛け声を受けますが…

掛け声がかかったので、気合の入ったお花がすぐさま救助に向かう…かと思わせて、
急に照明が切り替わる上、バックには何故か怪しい雰囲気の曲が流れ出します。
何となく何が起こるかは想像できる状況でしたが、見ていますと
曲に合わせてあの岡本さんがコミカルにセクシーポーズを決め出す
と言う驚きのシーンが見られたのです!

もちろん、気付いたお花が慌ててシーンをやり直して格好良く清二を追いかけて行くのですが
セクシーポーズを決める岡本さんには大笑いさせてもらいました。
おまけに、セクシーポーズの曲がかかった後、岡本さんが粗相を謝罪するシーンがあるのですが
このシーンも、岡本さんの弁解が非常にコミカルだった点が笑える所でした。

あらすじを簡単にまとめますと、清二が沈没した観光船から呉服問屋升田屋の若旦那・弥之助を助けます。
するとこの事をきっかけに、升田屋の大旦那がお花を弥之助の嫁にと求め、
またお花も弥之助に惚れ、子供もできた事から、お花は兄・清二の反対を押し切って弥之助の元に嫁く事になります。
お花は清二から「女三界に家なし」(これが今回の演目のタイトルの由来)
と言う言葉を教え込まれ、夫婦生活はどんなに辛くても忍従する事が大事であると言う事を知り、懸命に弥之助達に尽くします。
ところが、お花と夫婦になった途端、遊興三昧でお花を顧みない弥之助や弥之助可愛さのあまりお花に辛く当たる父の大旦那に
お花は辛く当られるようになり、とうとう家を追い出されそうになる…と言う感じになります。

前半は前述のように、ハイテンションなお花の独壇場と言った感じになりますが、
後半は理不尽にお花がいびられ、耐えるシーンがあるかと思えば、
ラストは結局、優しいお花がその優しさから窮地を脱し、その後の意表を突く幕切れに繋がると言う
時間の長さ以上に見せる場面が多い演目だったと思います。
なお、意表を突くラストと言うのは、散々升田屋父子にいびられたお花が
清二と一緒に木更津に帰るか(升田屋に残るか)?の賛否
お客様の拍手で決定すると言う、客参加型と言う形になっている点です。
以前に大井沢で見た時は割と賛否拮抗した感じでしたが
この日の客席の反応は何と満場一致で”お花は木更津に戻るべき”と言う結論となりました。
こうした作品自体の強烈な個性と、清純さとハイテンションさを併せ持つお花の魅力が上手に絡み合ったお陰で、
面白いけど、何か考えさせられるみたいな様々な余韻が残る作品でした。

岡本さんの演じたお花は、最初の場面を見た感じは、
コミカルな持ち味をふんだんに生かしたキャラクターなのかな?と思っていたのですが
見て行くと、意外とコミカルな部分が強くて見えにくい所で
岡本さんがアニメ等で演じたキャラで例えるなら
”純朴で優しい”面が結構見られたと思います。
特に終盤、命を粗末にしようとする人に対し、命の尊さを説くシーンのように、
しっかりした面も見られ、人物的にかなり良い印象(訛りが強いのはご愛敬と言う事で)を抱きましたし
話の最後の部分でも、お花のそうした優しい面が、結局身を助ける事になると言うオチも良かったですね。

この話の良い所をまとめると
一点目は分かりやすい点ですが、岡本さん演じるお花の出番が多い点
二点目は岡本さんの色々な姿が見られる点
三点目はお花が、実は岡本さんの持つ清楚だが芯の強さを強く持っているキャラだと言う点
こう言った理由もあって、この演目はこれまで見た岡本さん出演の舞台作品の中でも私が一番気に入った作品なのです。

木内隊長の挨拶、休憩等を挟んでスタートした第2部「夢の花道」コーナー
オープニングは岡本さんと木内さん、青山さん、峰珠都さんによる「ひばりの三度笠」
薄い黄色に黒の紋の入った揃いの着物を着た岡本さん達が息の揃った舞踊を披露しておりました。
しばらくショーが続いて、次に岡本さんが登場したのは歌謡ショー…ではなかったものの
大銀杏で浴衣姿の男装をした岡本さんが「ひとり旅」に乗って舞踊を披露されました。
この舞踊は(「ひとり旅」にもう一曲混ぜて踊っているので)時間が長い舞踊なんですが、
岡本さんは、キラキラした団扇と蛇の目傘を上手く使いこなして
華麗な舞踊を披露されていました。

その後、さらにショーが続いた後、再び岡本さんの舞踊の時間となりますが

今回の演目は「星になった人」でした!
岡本さんが織姫様を思わせるようなキラキラした着物を着て
被衣(かづき)とキラキラした扇子を使いこなして舞踊を披露する演目ですが
岡本さんの舞踊の中でも、この演目が特に私は好みなので、アナウンスが流れた瞬間は
内心「やった!」と思いました。
舞踊そのものも、岡本さんがクルクル優雅に回るシーンがあったりして、華があって堪えられませんが
使用している「星になった人」(林あさ美さんの歌ですので、歌詞が気になる方は調べてみて下さい)の歌詞と
岡本さんの踊りの雰囲気が非常にマッチしているんですね。

そして、ラストショーは「マツケンサンバ」なんですが
当然、岡本さんも「星になった人」でお召しになっていた”織姫様スタイル”のまま登場!
マツケンサンバに乗って、あの格好でノリノリで踊る岡本さんのお姿は、
岡本さんも楽しそうにされていましたが、見ている私も本当に楽しかったです。
2014年の湯野浜での竜劇隊公演は、都合もあって
残念ながら27日の千秋楽(演目自体は25日と同じですが、もしかすると違う所もあったのかも…)は見に行けませんでしたが
いつもでさえ120%感じられる公演の満足度が、今回は300%位まで感じられる位、楽しかったです。

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