「竜劇隊公演」
2010年3月14日 ホテル海山

この日が、一か月に渡る2010年湯野浜温泉・ホテル海山における竜劇隊公演の千秋楽に当たります。
第1部のお芝居は『女三界に家なし』と言う演目
岡本さんが演じたのは漁師清二の妹で、見初められて呉服問屋升田屋の若旦那の嫁になる娘・お花
まず、舞台の幕が開くと間もなく、花道の方から「あんちゃん、大変だ〜!」と大きな声を上げながら早速お花が登場してきますが
素っ頓狂な声で田舎訛りが強いと言う登場シーンを見た段階で、
おそらくお花は(『質屋の娘』のお福みたいな)岡本さんのイメージとのギャップが持ち味のキャラかな?と思いました。
実際に見ていきますと、お花は確かにそうした持ち味のあるキャラで、所謂天然キャラっぽい所も所々見受けられるものの
キャラとしては、アニメ等で岡本さんが演じたキャラからよく感じられた”純朴で優しい”面も強く感じられました。
そうした優しい面が、結局お花の身を助ける事になると言うオチも良かったです。

そして、この作品で私に強烈なインパクトを残した場面が、
序盤に清二が沈没した観光船を助けに向かった後、清二に一緒に行くのを止められたお花が、救助に向かおうとする場面でした。
ここでお花は、清二の発した格好良い決め台詞をコミカルに真似しながら、救助に向かおうとするのですが、
決め台詞を言った後にかかる「ハッ!」と言うかけ声が中々かかりません。
たまらずお花は芝居を中断し、「『ハッ!』と言う声がかからないんですが…」と音響の人に問い合わせ始めますが
音響の人の返事は「テープが切れたので、自前でやって下さい」と言う物でした。

困ったお花、ふと客席のお客様に目をやると
何とお客様に「声を揃えて『ハッ!』と言ってもらえますか?」と提案し始めます。
そして、お花(と言うか岡本さん)から段取りの説明があり
その指示に従い客席総出で「ハッ!」と言う掛け声を出す事になるのですが
この場面の岡本さんの喋りは、コミカルなお花と言う役と普段の真面目な岡本さんの人格が入り混じったように感じました。
テンションが非常に高めで、ユーモアに富んだ喋りが面白かった一方
客席を上手く乗せる岡本さんの仕切りの上手さも非常に印象に残りました。
リハーサル(これははっきり言ってバラバラでした)→本番(最初はちょっと揃わなかったですが、二度目は何とか揃ったような…)
と私含めたお客様、皆ノリノリで声を出してようやく話が進むのですが

掛け声がかかったので、気合の入ったお花がすぐさま救助に向かう…かと思わせて、
バックには何故か『8時だョ!全員集合』で使われていた「ちょっとだけよ」の時に使われた「タブー」と言う曲がかかります。
「まさか…」と思っていたら、案の定
お花がカトちゃんよろしく、ストリッパーの真似をし「ちょっとだけよ!」と悪乗りし出したではありませんか!
気付いたお花が、慌ててシーンをやり直すのですが
あの岡本さんが「ちょっとだけよ」(かなりハイテンションにやってる為、もの凄い「ちょっとだけよ」になってました)
を披露すると言うのは、舞台とは言え非常に驚きと同時に何とも言えぬ感慨を覚えました。

あらすじを簡単にまとめますと、清二が沈没した観光船から呉服問屋升田屋の若旦那・弥之助を助けます。
するとこの事をきっかけに、升田屋の大旦那がお花を弥之助の嫁にと求め、
またお花も弥之助に惚れ、子供もできた事から、お花は兄・清二の反対を押し切って弥之助の元に嫁く事になります。
お花は清二から「女三界に家なし」(これが今回の演目のタイトルの由来)
と言う言葉を教え込まれ、夫婦生活はどんなに辛くても忍従する事が大事であると言う事を知り、懸命に弥之助達に尽くします。
ところが、お花と夫婦になった途端、遊興三昧でお花を顧みない弥之助や弥之助可愛さのあまりお花に辛く当たる父の大旦那に
お花は辛く当られるようになり、とうとう家を追い出されそうになる…と言う感じになります。

前半は前述の場面の印象が強いので、ハイテンションなお花の独壇場と言った感じになりますが、
後半は理不尽にお花がいびられ、耐えるシーンがあるかと思えば、
ラストは結局、優しいお花がその優しさから窮地を脱し、その後の意表を突く幕切れに繋がると言う
時間の長さ以上に見せる場面が多い演目だったと思います。
なお、意表を突くラストと言うのは、散々升田屋父子にいびられたお花が
升田屋に残るべきか?清二と一緒に木更津に帰るか?
お客様の拍手で決定すると言う、これまた客参加型と言う形になっている点です。
ちなみに、この日の客席の反応は何と満場一致で”お花は木更津に戻るべき”と言う結論となりました。
こうした作品自体の強烈な個性と、清純さとハイテンションさを併せ持つお花の魅力が上手に絡み合ったお陰で、
面白いけど、何か考えさせられるみたいな様々な余韻が残る作品でした。

岡本さんが演じたお花は、純朴で健気と言ったキャラと言えると思いますが、
一方では命を粗末にしようとする人に対し、命の尊さを説いたりすると言う、しっかりした面も見られ
人物的にかなり良い印象(訛りが強いのは役の上でもあるし、ご愛敬と言う事で)を抱きました。
その上、話の主人公のような人物なので、劇中ほとんど出ずっぱりなのも良かったので
個人的な意見ですが、この演目はこれまで見た岡本さん出演の舞台作品の中で一番気に入った作品になりました。

休憩等を挟んでスタートした第2部「夢の花道」コーナー
恒例の岡本さんの歌謡ショーの時間となります。
今回は銀色のキラキラした着物で登場した岡本さんが「蘇州夜曲」を歌うと言う物で
曲の冒頭に「先程はお花ちゃんを演じさせていただきました」と演目の時と一転して、落ち着いた感じで挨拶されたり、
今回も最初は舞台上から歌を披露されていたのですが、
2・3番になると客席近くに降り立ち、握手して回りながら歌を披露しておりました。
その後しばらく舞踊が続いた後、岡本さんの舞踊となります。
今回の演目は「人生一路」で、
黄緑色でキラキラした着物をお召しになった岡本さん、扇を使った華麗な舞踊を披露しておりました。
なお、オープニング「ブラジル音頭」、ラストショー「大親分」には岡本さんは参加されませんでした。

参考・2010年湯野浜温泉竜劇隊公演の演目
日時芝居演目・役名歌謡ショー曲名舞踊演目・OP&EDショー演目
2月14・16・19・21
23・25・28日
「国定忠治」・お市『大ちゃん数え唄』『星になった人』・『木遣りくずし』・『花と龍』
2月15・18
22・24・26日
「殺陣師段平」・段平の娘お君『南の花嫁さん』『お前に惚れた』・『白虎隊』・『雪の渡り鳥』
3月1・3・5日「流転三度笠」・お仙
3月2・4・7・9・11・13日「待っていた男」・時雨のお弘『花笠道中』『ひとり旅』・『白虎隊』
3月8・10・12・14日「女三界に家なし」・お花『蘇州夜曲』『人生一路』

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