「竜劇隊公演」
2012年2月28日 ホテル海山

この2月28日の公演が2012年の湯野浜温泉での竜劇隊公演の千秋楽となります。
ちなみに、この日は平日で(公演はいつもと同じ昼1時開始)私は平日の公演を見るのは初めてでしたが、
会場に集まったお客さんは土曜日曜辺りよりちょっと少ないものの、盛り上がりはいつも以上でした。

第1部のお芝居は岡本さんが質屋「七福」の娘お福を演じる、私にとっておなじみの演目『質屋の娘』
話は「外見は大人だが、心は子供のまま自由奔放」と言うお福が
年下の店の手代新二郎に恋をし、父親に結婚したいと懇願した事から、騒動の幕が上がります。
一人娘のお福に甘い父親が強引に新二郎にお福との結婚を迫り、新二郎も結婚を承諾しますが
新二郎は、店の女中・おさよと恋仲にあったのです。
ずっとお福の身の回りの世話をして来たおさよは、お福の結婚話にショックを受け
国元から父が金策に出て来ていた事もあって、書置きを残し店を出て行きます。
そのことを知った新二郎は、お福に自分の本心を打ち明け、お福とは結婚出来ないと宣告します。
新二郎の気持ちを知ったお福は、二人の将来を思い、新二郎との結婚を諦め…と言うのがあらすじとなります。
(ただ、お福は結構しつこく、新二郎に自分と結婚してほしいと迫ってはいましたが)

いつもと多少切り口を変えて見所を紹介していきますと
まずお福の最初の登場シーン。頭にかんざしを9本も刺した状態で、踊るような足取りのお福が
花道から見るからに変そうな雰囲気を漂わせながら店に戻って来ます。
このシーン、予備知識無しで一見すれば、お福を演じる目の前の岡本さんと
『ヤッターマン』のアイちゃん、『花の子ルンルン』のルンルンの声の人
と言うのは、まず結びつかない事でしょう。
ちなみに、このバックには「ありがたや節」と言う歌が流れるんですが
「岡本さんが来る」ってのを知っていると、イントロが流れる時点で気分が盛り上がる事は言うまでもありません。

お福の台詞や仕草は、登場シーンのイメージそのままのコミカルなイメージが強いですが
お福の言動や台詞回しは色々なドラマ・アニメ等で見せてきた岡本さんの演技その物なのに
結構頭が足りない為か、やる事なす事笑いを誘うキャラなので
実物を見れば絶対にアイちゃん等岡本さんのアニメの代表キャラのイメージとのギャップに驚く事でしょう。
今回の公演のお福は個人的な印象として、何故かいつもより台詞回しが可愛らしい感じがしました。
その為、台詞が時折アイちゃんっぽく聞こえる気分がしたのが、、凄く良かったです。

演目としても、お福の行動・台詞回しを筆頭に新二郎とお福の父のやり取り等、基本的に笑える芝居なんですが
終盤、おさよが店を離れる辺りから、割と泣かせる展開になって行くのが良かったですね。
おさよと新二郎に去られるとお福も雰囲気を一変し、
「自分の馬鹿を治したい」と悲痛に訴えかけるのですが
周囲からは(お福が笑わせるキャラだから)笑いも起きてましたが、
結構岡本さんの言い回しからは、笑わせようとしつつも、お福と言う女性の悲しさを理解し
岡本さんがそうした胸中を上手く表現しているように感じられ
私は面白いのと同時に、どう表現したら良いか分かりませんが、とにかく心を打たれました。

ちなみに、この演目についてホテル海山のサイトに載っていた岡本さんのインタビューでは
女の生きざまがポイントだとおっしゃっていましたが
そうしたお福と言う女性の生きざまを、岡本さんが見事に表現できていたと私は感じました。
そんなしんみりしたシーンもありましたが、
ラストは泣いていたお福がまた笑い、軽快な踊りを披露しながら幕が下り…と言う感じの
端的に言うなら「笑って泣いて、でもやはり笑い」と言う感じの悲喜劇でした。
ラストの岡本さんの踊り、いつも以上に軽快でキレが良かったような印象がありました。

また、今回の「質屋の娘」で面白かったのがお福が新二郎に客席に挨拶を促し
新二郎がそれに応え、劇中なのにちゃんと挨拶するシーン。
新二郎の誠実な感じが良かったのですが、なんなら、お福も
「お忙しいとこようこそおいで下さいました。お福と申します」ってやってくれりゃ
と思った物ですが、それやったら「女三界に家なし」のお花と被っちゃいますから…

第2部のショーのオープニングは、岡本さんと木内座長達4人の舞踊「祭りだワッショイチンカッカ」
この演目は法被姿でバチを使って群舞を見せる木内座長達が最初に登場し、
2番になると、水色の着物姿の岡本さんが登場してきます。
その際、岡本さんがミニサイズの可愛らしい”は組”のまといを持って現れるのが面白かったです。
岡本さんは2番が終わると、一旦袖に下がってしまいますが、ラストは再び戻ってきて
は組のまといで決めポーズに加わっております。

続いてしばらく後に登場した岡本さんの舞踊は木内竜喜座長との二人舞「夫婦提灯」
黄色っぽい縞の着物に身を包み、提灯を使って木内座長と息の合った所を見せると言う演目で
提灯を舞踊で使うのを見るのは、珍しい事だなあと思っておりますと
おかめのお面を岡本さんが付けて舞踊をしたり、

色々と新しい事に挑戦しようとしてる岡本さん(誤解だったら失礼ですが)の姿に
演技者として、常に新しい物を目指す気迫を感じました。

その後の岡本さんの舞踊は、おなじみの「知らぬが花」
男性髷を付け、黒の浴衣姿の岡本さんが蛇の目傘と手紙を使っての舞踊を披露していました。
「知らぬが花」終了の次の次がラストショーで演目は「ラップ石松」
岡本さんは出て来ませんが、5人の石松(本物は1人)が軽快な踊りを見せるショーで
特にエグザイル風(私は眠狂四郎の円月殺法かと思いましたけど)の動きが印象的でした。

舞台終了後、ホテル海山の社長さんの「来年もこのような形態で公演を行う見込み」と言う
頼もしい言葉が聞かれ、竜劇隊のメンバーの挨拶も自ずと来年の抱負的な物になり
岡本さんも「来年は新たな演目を引っ提げてやって来ます」と挨拶をされ
私を含めたお客様は、岡本さんをはじめとする竜劇隊の皆さんの雄姿を、
来年もこの湯野浜で見られる事を期待し、帰路に着くのでした。

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