「沢竜二対竜劇隊〜岡本茉利リサイタルXIII」
2006年6月18日 新宿スペース107

(なお当公演は、「演劇グラフ」誌(以下「グラフ」誌)2006年9月号に、詳しい記事が掲載されていますので、
興味のある方はそちらもご覧になってみて下さい。)

新宿西口スペース107(公演場)に入ると、客席の入り口横には「アニメ」(絵本・台本)や「映画」(パンフレット)・書籍等
岡本さん関連の品々が数多く陳列されていました。
また入場の際、頂く事の出来る二つ折りのプログラムには、タツノコプロの笹川ひろし監督や
岡本さんのファンからのメッセージが折込で入っていました。
ちなみに笹川監督からのメッセージはこちら

「岡本茉利リサイタルXIIIに寄せて」
岡本茉利さんは、僕の大好きな声優さんだ。
その人が今、大輪の花を咲かせた。
舞台で堂々と難しい役に体当たりをしている姿は、実に気分が良い。
70年代、竜の子プロのアニメを見て育った人たちは、
茉利さんが声優として大スターだった事を知っている。
清潔感のある美しい声は、アニメファンにとってはたまらない魅力で、
その声は今でも心の奥に残っているはずだ。
『いなかっぺ大将』のキクちゃん、『けろっこデメタン』のラナタン、
颯爽と勇ましい口上で登場するヤッターマン2号の声は、
竜の子プロのアニメになくてはならなかった。
茉利さんの声優時代から見てきたものとしては、
なんとも頼もしくうらやましく、うれしい。
今度は、どんな色の大輪の花に咲くか。それも楽しみだ。

舞台は「第一部・質屋の娘」、「第二部・歌って踊って30分」、「第三部・森の石松」の三部構成で

【第一部・質屋の娘】

お芝居の内容を見て行きますと…
質屋「七福」の娘、”お福”(茉利さん)が年下の店の手代清三郎に恋をし、父親に結婚したいと懇願します。
一人娘に甘い父親が、強引に清三郎にお福との結婚を迫り、清三郎も結婚を承諾します。
しかし清三郎は、店の女中おさよと恋仲にありました。
ずっとお福の身の回りの世話をして来たおさよは二人の結婚話を知り、書置きを残し、店を出て行きます。
そのことを知った清三郎はお福に自分の本心を打ち明け、お福とは結婚出来ないと宣告します。
清三郎の気持ちを知ったお福は二人の将来を思い、清三郎との結婚を諦めます…と言う大筋の芝居です。

こう書くと、ごく普通の芝居の様ですが
今回、岡本さん演じるお福は
「外見は大人ですが、心は子供のまま自由奔放」と言う役回りで、
(はっきり言えば、お福は素直で気立ては良いのだが、少し頭が弱いのです)
これまでの茉利さんの演じる役とは、ちょっと毛色が違うようです。
「グラフ」誌で、この舞台のお福の写真を最初に拝見した時は、
お福と岡本さんが同一人物?と本当に感じてしまいました。
(じっくり見ると岡本さんだとよく分かるんですが)
更に言うと、それだけの情報を仕入れ、お福の人物像を理解していたはずなんですが、
私がビデオを購入して、実際の舞台の模様を見た時
お福が登場しても、すぐには岡本さんが演じていると言う事を理解出来ませんでした。
おそらく、今までずっと岡本さんのキャラと言うと“しっかりと地に足が付いたキャラ”
と言う先入観を私自身が持っていたので、
岡本さんの変身を、すぐには理解出来なかったのでしょう。
その位、お福は岡本さんのイメージとは異なる役です。

お福は最初に登場した時から、その独特の存在感で舞台を盛り上げます。
どちらかと言うと、笑わせると言うか笑われるようなキャラです。
ところが、そんなキャラが終盤に一転してシリアスなお芝居を見せると言う
メリハリのはっきりした難しいキャラ、それがお福です。
特に、私が心に残った場面は、
お福が惚れていた清三郎が好い仲の女中おさよが結ばれた後、
お福が自分の境遇に対し、本音を漏らす場面でした。
この場面は、岡本さんの台詞の言い回しや台詞の間、
のみならず表情もとても素晴らしかったと思います。
お福のキャラ付けとして、私が一番の難しさとして感じたのは
お福が「自分が頭が足りない」と言う事に気付いているようで
気付いていない(ように見えるけど…)と言う、実は内心が複雑な女性である点です。
その辺りの難しい所を岡本さんが、演技で上手く表現出来ていて、
お福のキャラに、深みを与えていたため、舞台全体が引き締まっていたと思います。

舞台を見終わった後に意外と岡本さんは、お福と言う役が演じやすかったのではないかと私は感じました。
何故、そう感じたかと言うと、お福の行った行為自体は
「自分を捨てても、他人が幸せになる事を望もうとする」と言う行動なんで、
実はアニメとかで岡本さんが演じてきたキャラと、
お福の行動のパターンは同じ面があると言えると考えたためです。
そうした心がお福にあると思って改めて見ると、
茉利さんの演じるお福が、また違って見えるかと思います。
今回の舞台は、作品の内容や岡本さんの演じたお福と言うキャラの性格等を考えると
さながら”藤山寛美の松竹新喜劇モノ”を岡本さんが演じたと言うのではないでしょうか?
岡本さんの演技は、本当に見事でしたし、作品の内容も時代劇好きの私にとっては、非常に満足の行く内容でした。

ただ、お福の設定年齢は36歳でして”質屋の「娘」”と言うタイトルや事前に伺っていた内容等から
もう少し、私は設定年齢が若いのかと思っていたんですが…
なお、この公演の模様は、沢竜二事務所より、
その物ずばり「岡本茉利」と言うタイトルでビデオテープとして販売されています。
パッケージも岡本さんのお福の写真二枚と二部の股旅姿の写真と、まさに岡本さんづくしのビデオですので
興味を持たれた方は、購入されてはいかがでしょうか?

【第二部・歌って踊って30分】
普段は”日舞”や”沢竜二さんの相手役”が多い岡本さんですが
今回の公演では、珍しく「股旅・三度傘」姿での踊りを披露しています。
踊りの中で、丁半ばくちの仕草をする場面があって、
そこで、岡本さんが踊るように、頭を抱える動きを見せている場面が印象的でした。
股旅姿なので、踊る内に腰の刀を抜くのかな?と思いながら見ていましたが
結局、刀を抜く場面が無かったのは、ちょっと残念でしたが
あまりやった事のない演目だと言う事に加え、
第一部であれだけの役をこなしていた事を感じさせない位、
岡本さんの踊りは良かったと私は思いました。
ちなみに踊りのバックで使用した曲は「次男坊鴉(からす)」です。
「グラフ」誌、及び本公演のビデオのパッケージにも
股旅姿で踊りを披露する岡本さんの姿が掲載されています。
なお、第三部の「森の石松」では、岡本さんは、女中”お夏”を演じていました。

このレポートは
ラヴェンダー様から提供いただいた公演のレポート、「演劇グラフ」誌の公演の解説記事
並びに沢竜二事務所より発売の本公演のビデオの視聴記録を基に、まとめております。
ラヴェンダー様、情報ありがとうございます。

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